みどころ
近作
ミロコマチコは、絵本作家デビュー前後から、時には音楽家と共に、延べ50回以上のライブペインティングを行ってきました。本展では、2016-2019年のライブペインティング作品をはじめとした絵画が一堂に会します。鋭い観察力でいきものの本質を捉え、ダイナミックなタッチで描きあげるのは、だれもがよく知るミロコマチコの表現ですが、2016年頃からモチーフが変化しました。身体の中を複数のいきものが埋め尽くす作品や、チョウの翅に自身の目が映りこんだ作品など、近作からはその後大きく表現が変容するきざしが見て取れます。
装画・アートディレクション
絵本作家や画家としての活躍のほうが広く知られるミロコマチコですが、書籍の装画や企業とのコラボレーションなど、イラストレーションやアートディレクションといった仕事も数多く手がけています。文字のレイアウトや作品のトリミングなど、必然的に他者の手が加わることが前提にあるため、自分が思うように描ける絵画作品とは異なる緊張感がただよいます。同時に、デザイナーの手によって、自身の表現が広がることへの期待感のような、絵によって他者とコミュニケーションすることの楽しさが伝わってくるでしょう。
絵本原画
ミロコマチコは、絵本作家としてデビュー以後、1年に約1冊のペースで絵本を発表してきました。豊かな想像力とのびのびとした筆致が魅力的な絵本は、2014年を境にさらに自由に、色彩豊かになり、においや手触りなど五感をも刺激するものへと変容しました。加えて、読み手によってさまざまな解釈ができる余白もうまれました。本展では、ブラティスラヴァ世界絵本原画展(第26回)において金牌を受賞した『けもののにおいがしてきたぞ』(2016年、岩崎書店)をはじめ、『まっくらやみのまっくろ』(2017年、小学館)、『ドクルジン』(2019年、亜紀書房)の3冊の近作絵本の原画を紹介します。
山形ビエンナーレ
2016年と2018年に参加した山形ビエンナーレは、ミロコマチコにとってのターニングポイントであったといっても過言ではありません。山車のまわりをぐるりと回りながら読むのが楽しい《あっちの耳、こっちの目》は、人間と野生動物のそれぞれの視点で綴られた二つの「おはなし」でできた立体絵本です。人間と野生動物が同じ場面を共有しながらも、両者の意識が交錯することはなく、自然のなかにおける人間の在りかたが問われます。
画像提供:Kanabou、東北芸術工科大学